講演のフィードバックをする
先生や教育関係者で 「カード・ダイアローグ」をやってみる会 @コミュニティスペースco-arc
に参加していただいた小畑あきらさんが、早速ご自分の関わるイベント、出版記念講演会の参加者の声のフィードバックのために使ってくださいました。
「感想や会話をしないよう」という指示がポイントだと思います。カード・ダイアローグは、話をするのが苦手な人のために、という前提がついつい強くなってしまい、皆が話しすぎてしまった場合に対応することが難しい、というのは先日の教育関係者の会で実感しました。
また、カードを使ったリフレクション(話を眺める)など、をうまくアレンジしてくださっています。講演者が”「自分抜きで行われる自身の講演についての感想と質問のやりとり」を眺めている”状況をつくるということ、とても良いと思います。
小畑さんはご自身でも対話にまつわる活動をされているので、一連の流れが見事に組み立てられていて、そこにカードを入れ込んでくださったように思います。トークや講演の後のフィードバックにカードは使えるなとは思っていましたが、この人数での実践は経験が無いため、レポートから学ばせていただきたいと思いました。
以下、小畑さんのレポートです。
今回はA4に「引用カード」と「考え方カード」を印刷するというカスタマイズを施し、出版記念の著者講演の際の「メモ」として、またその後の「パネルディスカッション」でのツールとして活用させて頂きました。
参加者約35名
◎講演での発話と傾聴
講演は予定時間の1時間を30分オーバーし「話しきって」頂きました。
参加者は予定を過ぎても「聞きいって」おられ、「引用カード」にもメモして頂いていた様子です。
質疑応答は、講演後では出にくいのと、問答が深まりにくいので、パネルディスカッションで受けると宣言。
◎講演後のパネルディスカッション(質疑応答)
まず始めにA4のカードダイアローグを二つ折りにしていただき、4〜5人のグループになってもらい、自分の前に掲げてキャッチした言葉を読み上げて頂きました。
その際に、読み上げるだけで、「感想や会話をしないよう」にお願いしました。
次に、お隣の方のカードを眺めさせて頂いて直感で気になる言葉を指さして「何故これをキャッチされたのでしょう」と質問して貰い、隣の方はなるべく感想やお喋りにらなように短い言葉で応えて頂き、他の方はその問答を眺めるというカタチで全員回して頂きました。
この時点で、同じ話(三木氏の講演)を聴いて、自分がキャッチした言葉と他人がキャッチした言葉のカードによる見える化と、それを選んだ「各自の理由」みたいなモノが少し感じて頂けたと思います。同じ言葉もあったでしょうし、そうでない人も居るということが認識できたと思います。
その間、講演者の三木氏と、パネラーのお二人には、参加者の中に分け入って頂き、どんな言葉がどんな理由で拾われたか、耳を澄まして貰いました。
◎パネラー登壇
参加者とパネラーと向き合って頂いて、講演者の三木氏は視界外に座って頂きました。
始めにパネラー2名の方に、講演の感想を述べて頂き続いて、会場の方に「感想でも質問でもありませんか」と声を掛けました。
質疑の場面では質問が出ないことが多いと思いますが、この方法ではスムーズに、質問や感想に挙手頂きました。
質問・感想を受けるのは普通であれば、講演者の三木氏になりますが、視界外に坐って頂いているので、登壇頂いているパネラーお二人に対して行って貰いました。
パネラーは本人に変わって、感想や質問を受けるカタチになり、本人はそれを横から見ているという位置関係です。
講演者の三木氏は「自分抜きで行われる自身の講演についての感想と質問のやりとり」を眺めている感じです。
パネラーと参加者の問答が一つ終わる度に、本人に「ご本人は(今の問答を聴いていて)いかがですか」的に発言を促します。
最後に「会場から2名・パネラー2名・講演者1名」より振り返りの言葉を頂き終了しました。
◎今回の進行で意識したこと 「話す」と「聴く」を分ける
講演自体も時間で切り上げるのではなく「話しきって貰う」事を心がけました。それでもご本人が一部割愛され30分オーバーで終わりましたが、話し切るという点からは割愛されずに2時間話されても、皆さんは聴ききられた時空間であったと感じていますし、それでパネルディスカッションが出来なくなったとしても、参加者からは不満は出なかったと感じています。
二部の始めに参加者「皆さん」にキャッチした言葉をシェアして頂くときに「会話・議論」にならないように心がけました。
こういう場面ではよくアイスブレイクとして自己紹介や、ゲームなどをされる場合がありますが、「カード」を掲げて自分のキャッチした言葉をシェアする方法だと、テーマに沿った「即アイスブレイク的」になっていい感じを覚えました。
感想・質問は、始めに参加者とパネラーで行って貰い、講演者の三木さんには「それを聴く」ということをして頂きました。
◎良かったこと
質問を直接本人に応えて貰うとそれが「正解」みたいな印象を受けそこで終わってしまうのですが、今回は先に「パネラーの方に我が事として答えて頂いた」ので、その答えがご本人の答えと違ったりしたのが良かったと思います。先に三木さんが答えたら、本来一人一人違っていい、様々な意見が出にくかったのではと思います。
多様性・多声性を認める。
◎カードの効用
今回はカードダイアローグとしては開発者の意図とは違った使い方になってしまった感じがしていますが、各々持参のノートなどにメモを取るのではなく、同じフォーマットに書くということと、掲げて発表するということが新しい感覚だったかと思います。
始めに回収はしませんと宣言していたからかもしれませんが、結構書き込んでおられて、全員に発言の機会を持って頂けました。各自のノート、メモ、付箋などでは、煩雑になりがちですが、カードというカタチは良いと感じました。
今回は3枚目の「トピックカード」を割愛したカタチでしたが、「引用カード」=三木氏の言葉=事実、と「考え方カード」=自分の解釈、を各場所が違うということで、分けて「聞ける」「書ける」「話す」事が出来たのではないかと推察しています。
そのこともあり、質問・感想も出やすかった(話しやすかった)のではないかと思います。また「発話」と「傾聴」、「事実」と「解釈」をゴチャごっちゃにした、お喋りにならないような場=対話の為の対話になったと思いますし、カードがなかったらその辺りが曖昧になって、単なる会話・議論になっていたと思います。
カードダイアローグは、対話を体験して頂いたり、沈着させていく手がかりになるものであると確信しました。引き続き研究し活用出来ればと思います。
小畑あきら
お節介なカメラマン・映像クリエイター
日本中にDialogue(対話)ができる組織を増やすために、 「対話が出来る人を育てることの出来る人づくり」 の為の研究を中小企業の写真撮影・映像編集、デジカメセミナー、企業研修を通して行っています。