専門書の読書会をする
ソーシャルワーカーなどケア領域の専門職のみなさんに、1冊の本を10ヶ月かけて読むという読書会に使っていただきました。
主催の作業療法士の山崎さんから感想とレポートをいただいています。10回も繰り返し開催されているので、より読書会の参加者のニーズに最適化されていっているという印象を受けました。
カード・ダイアローグの説明書では、1人発言したら他の人がコメントするという形での進行を提案していますが、
この読書会では、一通り全員発言した後に、進行役の方がどの話を深めるか投げかける、という方法を取られたとのことでした。
話題が重なった時に、先に発言した人のところで議論が尽きてし
また、「一周した後で話し合うことにしたら、
専門職の方の情報交換や交流に、このような形で多少なりとも役に立つことができたことを嬉しく思います。
ケアの本質―生きることの意味
田村真 ミルトン・メイヤロフ
山崎勢津子さん(作業療法士)のレポート
読書会(ミルトン・メイヤロフ「ケアの本質」を10回に分けて読む)
使用期間と頻度:2017年5月~2018年2月(月1回、計10回)
使用人数:5人~7人(各回ごとの申し込みだったが、ほぼ固定メンバーとなった)
時間:一回あたり3時間
場所:某施設の会議室
用意するもの:飲み物とちょっとしたお菓子、白板
ルール:別紙の通り
方法:
1)毎回、指定された範囲を各自が読んで、カードを記入した上で読書会に参加する。
2)1回につき3項目を取り扱うため、1項目につき1時間を目安にカードを使って話し合う。カードは1項目につき3枚(「引用カード」と「考えカード」を合わせて6枚)まで
3)初めにそれぞれが書いてきたカードを発表して一周回す。極力、質問も意見もせずに回す。
4)回し終えた後、進行係(今回は全回通して同じ人)が場に投げかける。
例)
・「出されたカードで気になるものや、もう少し聞いてみたいというものはありましたか」
・「カードの発表の中で『ここについては他の人の意見を聞いてみたい』という声がありましたが、それを取り上げてみましょうか」
・「この部分は複数の人が発表の中で触れていたので、少し深めてみましょうか」など
5)一時間ほど話し合ったらその話題は終了とし、5~10分ほど休憩時間を取る。その間に各自、飲み物などを取りに行く(飲み物とお菓子は別のテーブルにセット)。
6)3~5を3回繰り返す。
7)その日のすべての項目が終了したら、カードを撮影し、次回の予定を確認して、読書会を終了する。
<参加者のカードを使った感想>
・考えカードがあることで自分の感想を文字に落とし込める
・本を読みながら考えることはそのつどタイムリーなもの(思いつき)なので、ふだんは後から「なぜここに線を引いたのか」が思い出せないことがある。カードを書いておくことで、発表までにタイムラグがあっても「なぜそこを引用したのか」を正確に思い起こすことができる。
・言葉にするのって難しいとあらためて感じた。
・線だけを引いてしゃべるのは難しい。カードがあると助かる。
・2つのカードがあることで、思ったり考えたりすることが客観視できる。
・読むだけじゃなく、(考えカードに)自分の言葉で書くことで、より沁みやすい。
・カードを書くために、カードに書くことが浮かぶまで何度も本を読んだ。その作業が本の内容の理解につながったように思う。
<主催者としての感想>
1)人数が多いと机が大きくなるため、カードを囲む形になりにくい(1グループ3~4人くらいが適当だとあらためて感じた)
2)時間内にみんなが発表できるよう一周まわるまで、他の参加者の発言を控えてもらったが、その後のディスカッションにおいて、1の理由からカードを見て話し合うことが難しく、進行係が自分用のメモで何が出されたかを記録しておかなければならなかった。
3)1と2の状況から進行係への“お任せ度”が高くなり、進行係を担うにはある程度の力量が必要となった。
4)しかし人数が多いことで、聞き役に回る時間が長くなったため、発言が苦手な参加者の負担は軽くなったように感じる。またいろいろな参加者の意見を聞くことができ、刺激になったように思う。
5)カードがあるため、記録にかける時間や労力は少なくて済んだ。
6)初回はカードの使い方を説明するため、読書会の時間内にカードを書いてもらったが、2回目からは「事前に書いて来たい」という声が参加者から挙がったため、やり方を変更した。
7)6のやり方を採用したので、初回に参加していない人が(途中から)初参加する際に使い方にズレが生じることがあった。しかし、他の人の使い方を見て、すぐに習得できていた。
8)カードが途中からバージョンアップした際、「引用カード」、「考えカード」と日本語表記になったことは「分かりやすい」と好評だった。
9)「書かない」という選択肢も用意したため、参加者は参加しやすいようだった
(実際に書かなかった人は一人だけで、「この項目についてはよく理解できなかったので」という理由だった。それも一つの感想/意見ということになった)。
10)カードの内容をきっかけに、お互いが自分のこと(本の内容に関連した自分のことや自分の考え)を話しやすくなったようだった。
山崎勢津子
作業療法士として精神科で働いています。
一方向的な話がどうも苦手です。
カードダイアローグは双方向のツールとして、気に入って使わせてもらっています。