Close

2018年5月23日

勉強会をする

カード・ダイアローグをtwitterで見つけて関心を持ってくださった中村健太郎さん(モクチン企画プログラマ兼建築家)が、勉強会に継続して使っていただいています。

メニーカンファレンス twitter

「建築に軸を置きつつ、さまざまな現代の問題を議論する場」とのことです。
レクチャー+討議の回では毎回使っていただき、想定(4-5人)よりは人数が多いこともあり、工夫と共に独自の使い方が発見されています。
カード・ダイアローグの説明書のわかりにくかった点など補足させてもらいながら、フィードバックをいただいています。今後どう使われていくかを楽しみにしています。

私事ですが、サトウは建築の学生でした。(2年のみ、その後情報工学へ) 当時、パターン・ランゲージとオブジェクト指向に強く興味を持ち、カード・ダイアローグもなんらかの形で影響を受けていると思っています。
中村さんの論考 「ドグマとしてのアレグザンダーを超えて──設計方法論の臨界と転回」 もパターン・ランゲージに関するものであり、興味を持ってくださったこととても嬉しく思っています。

以下、中村さんによるレポートです。

 


カード・ダイアローグは、月一で開催される建築批評イベント「メニカン」にて、2018年3月28日現在、通算三回利用されています。

 

「メニカン」には「レクチャー」というコーナーがあり、建築学徒による30分程度のレクチャー、およびそれを元にしたオーディエンスとの討議の場が持たれています。「レクチャー」は一方的な教授の場というよりは、双方向的な学びの場となることを目指しており、なかでもカード・ダイアローグを用いた「持ち帰れる」レクチャー批評は中心的な役割を果たしています。

 

これまでの三回を通して、カード・ダイアローグの用い方は次のように変化してきました。

 

第一回:中村健太郎によるレクチャーと討議

利用方法:レクチャーへのフィードバック収集と、ディスカッションの補助として

ディスカッションの様子

集められたカード

2018年1月14日、メニカン運営メンバーの中村健太郎がレクチャラとなった「レクチャー」において、カード・ダイアローグは初めて使用されました。

 

当日はレクチャーの直前に、オーディエンスに対してquoteカードとthinkカードをそれぞれ「レクチャラの発言でおもしろいなとおもったものを書き取るもの」「話を聞いていて思いついたことを書き取るもの」として説明したうえで、40分ほどのレクチャーを行いました。

 

レクチャーの後、オーディエンスそれぞれに自分の書いたカードの中からひとつを選んで読み上げてもらい、それに対してレクチャラがコメントを加えると言うかたちで振り返りを行いました(討議)。またカードはその後レクチャラが回収し、別の執筆活動に役立てました。

 

討議のフェイズでは、当初予想していたようなカード・ダイアローグによるディスカッションの組織化は見られず、レクチャラとオーディエンスの直接対話が人数分繰り返される、というような形式になってしまいました。同時に時間の都合上、全員のカード全てを消化することもできないという問題がありました。

 

この問題に対しては、カード・ダイアローグ作者のサトウアヤコさんより、次のようなレスポンスをいただきました。

 

(…)著者の居る読書会のような構造になってしまうので、皆で1冊の本を読む、とか、トークの後、話者を抜いた皆で話をする、という状況じゃないと、本来想定した状況にはなりにくいと思います。

皆で議事録を取る、という状況になっているので、
全員のカードを時系列に並べて、話の流れ全体をざっくり振り返る&気になるカードをピックアップ(中村さんが選ぶか、書いた人が1人1-2枚選ぶか)して掘り下げる、という感じでしょうか。

 

第二回:KohYoh Yangによるレクチャーと討議

利用方法:レクチャーへのフィードバック収集と、ディスカッションの補助として

ディスカッションの様子

集められたカード

2018年2月18日、メニカン運営メンバーのKohYoh Yangをレキチャラとする「レクチャー」で、カード・ダイアローグをもちいた二回目のレクチャー・討議が行われました。

 

当日は「メニカン」に初めて参加するメンバーもいたため、改めて前回同様のqutoteカード、thinkカードに関する説明を行い、30分程度のレクチャーが行われました。

 

前回の「レクチャー」の報告に対する、カード・ダイアローグ作者のサトウアヤコさんによる次のレスポンスを受けて、「討議」の方法は次のように修正しました。レクチャーの後、カードをすべてレクチャラに集め、ひととおり目を通した上で、レクチャラが気になったカードに対してコメントを加え、これを深めていく、というような形式です。

 

前回に比べれば、発言機会がランダムにオーディエンスに振り分けられる分、「討議」自体もよりディカッションめいた、複数人での対話がみられました。同時に数人の弁の立つメンバーによる議論の寡占状態も見られました。とはいえカード・ダイアローグなしのディスカッションに比べれば、そうした状況はかなりの程度阻止されているように感じます。

 

またレクチャーに対するメモという形式からか、thinkカードにレクチャラへの質問を書くケースが目立ち始めました。この是非はまだわかりませんが、カード・ダイアローグにquestionカードが無く、代わりにthinkカードがあるということをどう考えていくのか、個人的には興味深い問題だなと思います。

 

最終的には、またしてもレクチャラがすべてのカードを処理しきれないという状態に至りました。これについてはYangくんが目立った質問で当日処理できなかったものについて、後日文面で回答を行うという方法を取りました。しかしレクチャラへの負荷が高く、ルール化できる方法ではありません。むしろ問題はいかにして回答する必要のないカードをあぶり出すか、ということなのではないかという考えに至りました。

 

また単純に机が広すぎ、カードを中心に議論をするにはお互いの距離が広すぎたという問題があったのではないか、という反省も寄せられました。

 

第三回:寺田慎平によるレクチャーと討議

利用方法:レクチャーへのフィードバック収集と、ディスカッションの補助として

レクチャーの様子

討議の様子

2018年3月18日、メニカン運営メンバーの寺田慎平をレキチャラとする「レクチャー」で、カード・ダイアローグをもちいた三回目のレクチャー・討議が行われました。

 

当日は「メニカン」に初めて参加するメンバーもいたため、改めて前回同様のqutoteカード、thinkカードに関する説明を行い、30分程度のレクチャーが行われました。

 

その後の「討議」では、前回の反省を踏まえ、オーディエンスとレクチャラは小さくまとめた長机の周りにあつまり、その上にすべてのカードを並べました。それらを全員で眺めながら、レクチャラがピックアップしたカードについて対話を深めるという形式をとりました。これにより、目につくカード以外は取り急ぎその場での議論からは外すという合意が、なんとなく取れたように思います。

 

しかし当初、ランダムにカードをならべた状態では何をみればよいのかわからず、討議がなかなか深まりませんでした。そこでテーブルの左右にthinkカードとquoteカードを分離して並べ、おもにthinkカードを眺めながらコメントを加えてゆくという方法を取りました。これにより、認知的な負荷がかなり下がったように感じられ、討議もスムーズに進み始めました。

 

他方、参照されることのなくなったquoteカードについては、討議のあと、レクチャラがオーディエンスの興味を確認する指標として用いるという考え方で処理しました。しかしこれは次回以降の課題でもあると認識しています。

 

最終的には、レクチャラ、オーディエンス双方にとって満足度の高い討議となりました。またレクチャラの意向により、これまでは行っていなかったカードのスキャンと参加者全体への共有を後日行いました。

 

おわりに

三回のカード・ダイアローグを用いたレクチャーと討議を通して、少しずつメニカンなりの使い方のようなものがまとまってきたように思います。具体的には

 

  • オモシロイと思ったことを書き留めるquoteカード、新しいアイデアを書き留めるthinkカードのみを用いる
  • なるべく小さいテーブルを用いる
  • カードはquoteカードとthinkカードを別にしてテーブル上に並べる
  • レクチャラがオーディエンスと対話しながら、thinkカードについてコメントを加えていくという方式にする

 

といった形です。なお懸念点や解決すべき問題としては、

 

  • quoteカードの有効な使い方について
  • thinkカードに「質問」が多く書かれる件
  • カードに書かれた内容を、オーディエンスに後日共有する上手な方法

 

などがあげられるのではと考えています。

 

 

中村健太郎 / 1993年大阪府生まれ。2016年慶應義塾大学SFC卒。専門はアルゴリズミック・デザイン。学生時代より批評とメディアのプロジェクトRhetoricaに携わる。現在はNPO法人モクチン企画にて建築設計・システム開発に従事。

Pocket